昨今,TEPCOの料金値上げが大きな議論になっている.もちろん,反対の声が多いのは当然のことだが,どうもTVニュースを見てて気になることがあるので,ちょっと書いてみたくなった.
TEPCOの本質的な経営判断の間違いは,以下のようなところだと思う.この辺りの整理が出来ていない以上,潰れるのも覚悟で,現状の料金体系を維持するしか無いんじゃ無いだろうか?潰れてもいいじゃん,という割り切りも,多分,同時に必要なのだ.
- 福島の原発について,40年超えになりそうな環境下で,それでも古い炉を動かし続けたこと.もちろん,炉の廃棄とそれに伴う費用,新しい炉を新設する設備投資の大きさは考える必要があるが,原子炉を運用することで燃料費を抑えられたのも事実.これを,ひたすら現状維持で運用し続けようとした経営判断が議論されていない.
- その原子炉の「もしもの時の」危険性が指摘されながら,これはTEPCOが反対したこと.原子力安全保安院だったか,委員会で指摘された「全電源喪失」の可能性に対して,TEPCOと関西電力はいずれも「これこれこういう対策を行うから大丈夫」と自身で作文して対策は不要としていたこと.これも,投資対効果という経営上の判断が根拠にあったはずだ.
しかるに,現状の経済産業省主催の「電気料金値上げに関する公聴会」での議論で,以上の2点をどこまで問うているのかが全然伝わって来ない.どうあるべきかという議論に繋がらない.ただ「電気料金を上げさせろ」というTEPCOと,「東電憎し,値上げ反対」の市民感情の対立という構図しか伝わって来ない.TEPCOの「ごめんなさい,過去の経営判断が間違いでした」と言わない現経営陣も問題なんだけど,今のことしか言わない市民もどうだろうと思わずにはいられない.
ちなみに,福島第1原発で,僕が気になっているのは以下のようなことだ.
- なぜ,全電源損失の可能性が国内で議論された時に,それは起き得ないといったのか?その全電源損失が何によってもたらされると言う議論をしていたのだろうか?
- 福島の古い原発が,U.S.からの直輸入品だったから,非常用の電源とかを地下に置いた,その理由は彼の地で問題になるのは「竜巻」だからだ,という情報は得ている.竜巻が起きた時に,全電源損失を招かないように非常用電源を地下に置く,という判断は大変正しく見える.そのような「システム設計の根拠」に立ち戻らずに,なぜ安全性は大丈夫です,と言って来たのだろうか?
- 東北地方で大きな地震が起きる可能性は,今回の事故の数年前から議論のまな板には乗っていた.それを「起きない」とした根拠は何なのか,なぜその状況でも大丈夫という判断をしたのかをきちんと説明していない.どういう根拠だったのだろうか?
簡単に言えば,海のそばにあったディーゼル燃料の貯蔵庫を,少し高いところに移設するとか,非常用の電源装置を建屋の上に置くとか,僅かな費用で対応出来そうな改善策はあったはずだ.それを現状維持で通したのは経営判断だ.その結果得られた損失は,消費者の責任では無い.サービスを提供した側が責任を持って対応すべき範囲だと思う.もっと言えば,その結果とその後のTEPCOの経営陣の対応のまずさが,現状の「国内の全原発が止まっている」事態を招いている,という自覚があるんだろうか,と思ってしまうのだ.
同時に,こうした知見をきちんと「反省」として表明することで,例えば,関西電力等,他の電力会社が今何をすべきか,どういう情報を出して周辺住民に「安全です」と納得いただくか,という基準が明確になるはずだ.そうした議論,反省が無い現状が,エンジニアである僕にとっては,非常に歯がゆい.もっと言えば,その態度が原子力産業を潰している,ということになっているのでは無いだろうか?
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