ここのところ,都内実家出張所に,コンパクトにDAW環境を用意しようと検討をしている.広くはないマンションの一室に,親の介護をしつつ,少しでも楽器を揃えて宅録作業が出来ないか,という画策をしているのだ.
そんな中,ArturiaからAudio Fuse 16Rigという19" Rack 1Uサイズの32 input, 28 outputのAudio I/Oが発売されるという情報を得た.これ,最初に見たのはYouTubeのReview Videoだった.へぇ,そんなのが出るんだ,ということで,ちょっとArturiaのサイトを漁って見た.
- Analog in 16ch, Analog out 8chという豊富なAnalog I/O
- ADAT in 16ch, ADAT out 16chという十分なDigital I/O
- USB Hubの機能も持っていて,さらにDin MIDI portが2つ出せる
- USB-Cでホストと繋ぐ構成
これは,伊丹スタヂオで展開していた26UのRackをコンパクト化するのに良いんじゃ無いか?と思い立った.
今,都内実家出張所ではSonnet TechのEcho 20 Thunderbolt 4 Dockを入れていて,MacBook Pro 14"からはThunderbolt 4ケーブル一本で繋いでいる.これはUSB-Cポートを4つ,USB-Aポートを4つ,Thunderbolt 4を2系統出せる.Thunderbolt 4の1本は外部27"モニタ用に使っていることもあり(Echo 20からはMonitorにUSB-Cでは繋げないという仕様らしい),Thunderbolt 4でDTMの機器に使えるのは1本だけ,これはUniversal AudioのApolloとMOTU 828esをシリーズに繋いで使うつもりだ.この状況だと,USB-C portを使える,I/Oの豊富なAudio I/Fは大変ありがたい.
MIDI音源は伊丹Studioから持ってきたIntegra-7, Motif Rack XS,Vintage Pro,Ensoniq MQ-Rackを繋げれば嬉しい.すると,Audio Fuse 16RigをHubにして,これら一式を纏められそうだ.キーボードはすでにKorgのMicrokeys Air 61を用意しているし.録った音へのEffect用outboardは,先日中古で手に入れたUAのApollo 8を使えば,Guitar/Bassのampも最低限揃えられそうだ.それに伊丹で使っていたHELIX Rackも1台遊んでる.ちょうど,Apollo 8用に10Uの据置き19" Rackも買ってたし,なんかこれでうまくまとまるんじゃね?
そんな訳で,Audio Fuse 16Rigを都内実家出張所のmain mixerとしてシステムを組んで見よう,という気分になったのが10/25のこと.その後,国内の楽器屋さんのサイトを漁って見たら,10/28に販売開始という告知も出てた.
ちょうど,Apollo 8を19" Rackケースに収めるためのRack mount用ネジを調達しようとして,駆け回っていた時期だったのだが(これが,最近,大手楽器販売店では扱いが無くなってて往生していて...),その際,神南のRock oNに立ち寄って,Audio Fuse 16Rigをどこまで値引きできるかも聞いてみた.Digimartに出ていた最安値が¥206,250程度,これを端数切捨て迄はしてくれる,とのこと.どうも,メーカ希望小売価格は¥275,000くらいらしいので,ここまで下げてくれれば納得感もあるな.そんな訳で,オーダを淹れたのが11/01のこと.Rock oNの受付の兄ちゃんは,その場でKIDに電話して国内在庫を確認してくれて,配送日程も調整してくれたし,とても助かった.こちらの都合も色々あったので,結局,都内実家出張所にAudio Fuse 16Rigが到着したのは11/07のこと.まぁ,発注から1週間で届いたし,良い方だろう.
さて,ここまではとても良いUser Experienceだったんだが,ここから色々と悩ましい状況になってくる.概ね2〜3個ほど,うちのDTM環境に組み込んで気がついたことがある.
- セットアップの問題
19" Rack Mountの耳は,desktopで使うことも想定して,別パーツとして梱包されている.本体に植えられている六角ネジを,付属のトルクスで外して,耳を付けて締め直すんだが,この六角トルクスネジがとても小さい.床に落としたらどこかにお隠れあそばしそうで,怖い.マニュアルもこの辺りの記述が意外と不親切だった.
また,ソフトウェアのダウンロードも悩ましい.どうも,まずSoftware Contorl CenterというSWをダウンロードしろ,と言われるので,製品のレジストレーションをした後で,このSoftware Contorl Centerをダウンロード,インストールする.さて...ダウンロードされたソフトを見ると,AUのplug-inとかはダウンロードできるんだが,Audio Fuse 16 Rig本体の設定用ソフトウェアが見当たらない.
うーむ,と悩んでマニュアルを見直すと,どうやら別にAudio Fuse Control Centerというアプリをダウンロードするらしい.Google ChromeでArturiaのサイトにアクセスしてダウンロードしようとすると,今度は何故かダウンロードが不可となる.何度かやってもダメだったので,これはArturiaのサポートに連絡.その後もグダグダやってたら,safariでアクセスしたらダウンロードが出来た.Arturiaのサポートによると,どうやらArturiaのダウンロードサイトはhttpsで設定していないらしい.このため,Google Chromeでアクセスするとファイルがダウンロード出来ないとのこと.うーむ,まぁ,Safariで落とせたから良いけど,運用上,これは良いWebサイトの状態なんだろうかという懸念は残る.
- Audio Fuse 16Rigを外部同期で運用しようとするとHangする
やっと,色々と設定ができるようになったので,ざっくりと,Audio Fuse 16Rigを設定してみた.Mixerとしては,簡単に言えば16ch Analog+16ch ADAT,4 Aux busを持ったMixerという感じになる.うちのDTM環境では,MIDI音源を4つ(Motif Rack XS,Integra-7,Vintage Pro,MR-Rack), DrumとBassの音と上モノを分離してEffectをかけようとすると,Aux BusをStereo 2 busの出力として扱うのが良い気がする.
そうすると, 音録りにはやっぱり,別のAudio I/Oを準備した方が良さそうだ.幸い,伊丹に導入したMOTU 828esをこちらに持ってくればこれは可能だ.Apollo 8はGuitar/Bass系の音を纏める(HELIXもApollo 8でまとめる)ことにして,こちらもMOTU 828 esにADATで送り込めば貴重なanalog I/Oを使わずに済む.DAW上の音録りは,MOTU 828esで纏めるのが使いやすそうだ.ADATでのデジタル同期を正しく機能させるためには,MOTU 828 esをinternal clockで,Apollo 8とAudio Fuse 16Rigを外部Word Clock同期 48khzで動かすように設定する.このためのワイヤリングを済ませたら,テストを兼ねてradikoの音をAudio Fuse経由でストリーミングデータを受けて,これをADATに流してMOTU 828esに送るようにroutingして暫く音を流してみた.するとどうだろう,Audio Fuse 16Rigからの音の出力がピタっと止まることがあるのだ.ホストのMac上ではradikoを流しているのに,音がピタっととまる.試しに電源を入れ直して設定をし直すと,また暫くは音が流れるのだが,暫くするとまた音が止まる.どうやら,Audio Fuse 16RigがHangしているらしい,とアタリがつく.
連続稼働時間に依存するのか,と思うと,必ずしもそういう訳では無い.ある時は20時間は動いた(けど,24時間は持たない,いつも1500〜1700頃は不安定になる)し,あるときは20〜30分程度でHangする.しかも,rebootするとAudio Fuse 16Rigの外部同期の設定がクリアされる.大抵の場合,一度Hangしたら2回か3回,rebootしなくちゃいけない.外部同期の設定を修正する前にすぐにHang upすることもあり,非常に動作が不安定だ.これは正直参っている.
Artriumのサポートには本件報告して,reboot時に外部同期の設定がクリアされる問題はあちらも認識しているとのこと.ただ,あちらでは8時間連続稼働させてもHangすることは無い,と言われている.他社のAudio I/Oとの同期はまだ試していないらしいし,48khzでの同期も試していないらしいが....どうも,うちの個体だけの問題と言われて往生している.Sleepのせいじゃ無いか,と言われたのもあり,MacBook Pro 14"をrebootしてからストリームデータを流してみるが,やはり暫くするとAudio Fuse 16RigはHang upする.これでは安心して宅録環境のmixerとして使えないなぁ,という状況.¥200Kの出費なのに,とも思うが,これなら伊丹で使っていたMOTU 16A+MOTU Micro Expressのセットと入れ替えるか,現在悩み中.この場合,都内実家出張所の19" Rackが埋まってしまうのと,Thunderbolt 2 busをもう一本確保するためにThunderbolt 4 Hubも準備しないといけないなぁ,と,狭い実家出張所の中で改めてワイヤリングをしなおす作業に躊躇してまだ,手を付けられていない.
可能性としては,Thunderbolt 4 Dockが悪さをしているかもしれず,ちょっとAudio Fuse 16Rigを直接MacBook Pro 14"にぶら下げたらどうなるかは確認してみようと思い,MacBook Pro 14"の別のThunderbolt 4 portに直接繋いでみたんだが,Hangする状況は変わらない.中途半端に不定期な間隔で,だが確実にHang Upするのだ.Artriumのサポートの方ではHang upは再現しない,お前の個体だけみたいなのでLocalのディストリビュータ(K.I.D.)に見て貰えと言われている状況で正直参っている.色々と結線して試した後でそれ言われてもなぁ....orz....新しいFirmwareも落ちてこないしなぁ.悩ましいところだ.
- Audio Fuse 16 rigのUSBポートはMIDIしか流さないの?
YAMAHA Motif-Rack XSとRoland Integra-7は,USB2.0接続でMIDIを送れるのが大変助かるところ.Audio Fuse 16RigがUSB-Aポートを持っていることもあり,ここからUSB Hubを通して分岐しようと当初考えていた.DTM用のRackと,一般のデスク環境とは,USB-C1本で繋ぐ形にすることを想定していたのだ.
ただ,これは実際にはうまく行かなかった. 背面のUSB-AポートにUSB Hubを通してMotif Rack XSとIntegra-7を繋いだんだが,なんか,MacOSのAudio MIDI setup側からはこれらの機材が見えない状況が見えた.まだ十分に確認は取れていないんだが,この辺りはちょっと注意が必要かもしれない.フロント側のUSB-AにはKorg Microkeys AirをUSBで挿していて,これは認識されることを考えると,あるいは可能なのかもしれないが,一度やって駄目だったので,今はリアパネルのUSB portにUSB Hubを噛ませてIntegra-7等をぶら下げる運用は避けている.ただ,そもそもAudio Fuse 16RigがHangするような状況では,rebootの都度USB portが落ちるので,うまく運用できないのも気がついた.そもそも,Audio Fuse 16Rigをrebootすることになるか,予測不可能なのだもの.実際,Audio Fuse 16Rigをrebootするときに,Microkeys Airはresetされている状況だ.
これに関しては,マニュアルもちょっと不親切で(大体,今配布されているAFCCのマニュアルは,Audio Fuse 16Rigに関する記述がまだ無い),現在のマニュアルでは,MacOS 12のAudio MIDI 設定上でどのように設定すれば良いか,正直明記されていない(見つけられていない).Audio MIDI設定の上では,Audio Fuse 16Rigは,MIDIの入力2port・出力4 portを持った機材として見えているのは判っているんだが...,ってそれ,USB-Aの先にHubがぶらさがること考えて無い..んじゃね?取り敢えず,Vintage ProはAudio Fuse 16RigのDIN MIDI 1 port経由で繋いで,MIDI信号がVintege Pro側に流れるのは確認出来たのだけど.
そんな状況で,残念なことに拙宅のDTM環境では,まだ,Audio Fuse 16 Rigはうまく動作していない.もう少し,設定やワイヤリングを色々と見直しているが,これは初期不良と言うことかな?いずれにせよ,一度,LocalディストリビュータのK.I.D.に,機材を送り返して見て貰うのが良いのだろう.ただ,Audio Fuse 16Rigを外す期間のために,今は寝かせているMOTU 16AやMOTU Micro Express,AVB HubやThunderbolt 4 Hubを持ってくる必要はあるし,ワイヤリング全体も見直さないといけないし.机周りのケーブルをすっきり整理してコンパクトなDTM環境を構成したいと考えて導入したんだが,1ヶ月奮闘して,当初の目論見が達成しない感じがする.せめて,Audio Fuse 16Rigの新しいFirmware updateが出て,同期設定が本体に保存されるようにならないか,とも思うんだが.これからこの機材を導入する予定の方がいれば,この辺りの情報が少しでも役に立てば嬉しいなと思って,途中経過だけど上げておく.
最後に,Audio I/Oとして,Audio Fuse 16Rigの出音は素直で良いと思うけど,Ch毎にNoise GateやCompressor等を挿せないのは残念.この点は,MOTU 828 es等のAudio I/Fの方が使い勝手が良いと思う.MOTUのAVB対応のAudio I/Fは,現在,軒並み国内の在庫一掃しているようで(Thunderbolt 2でbus throughできない構成のAudio I/Fなので,大規模システム化が辛い,市場からThunderbolt 2がほぼ払拭している,という状況を考えると,あるいはこの辺りの機種を入れ替えることを考えているのかもしれないなぁ),入手が困難なのが悩ましいところだけど.ちなみに,拙宅で48khz samplingで統一しているのは,AVBの制約によるんだが,個人的にはAVBの規格は手軽で良いと思うのだけどなぁ.